絵本 はせがわくんきらいや

絵本 はせがわくんきらいや(作・絵 長谷川集平 復刻ドットコム)

 

 教員として勤めているといろいろな子どもと出会う。時には障害をもった子と出会うこともある。かわいそうという気持ちになってしまい、本来自立すべき力を伸ばすことができない。そこで全ての教員、保護者におすすめしたいのが「はせがわくん きらいや」である。

このはせがわくんは森永ヒ素ミルク中毒の患者である。他の子どもと同じようなことが出来ない。このはせがわくんに対して主人公の男の子は声を掛ける。時には「どうしてできないの」と聞く。ぶっきらぼうではあるが、差別しようとか、可哀想だという気持ちはない。それでいてはせがわくんのことを仲間として真剣に思っている。

やはり、この絵本も読み聞かせの方がいいと思う。声に出して読まないと、本当にこの本の素晴らしさは読み手にも伝わってこないだろう。ただ読んでいて読み手の方が先に読めなくなってしまう可能性もある。この本のメッセージについては、文才のない自分には伝え切ることが出来ないのはとても不甲斐なく残念である。一度ネットで検索して自分の目で見てもらいたい。表紙も他の絵本とは全く違っている。赤一色で描かれ、上手とは言えない絵が描かれている。しかし、他の絵本よりも訴えてくるものは大きい。

さらに、この絵本も刊行した出版社が何度も倒産したことによって、数度の絶版という不遇をかこって、読者の手から失われてしまったとのこと。この絵本はいつまでも残してほしい。

 

閑話休題

10数年前に近くの美術館でアウトサイダー展があった。ここでのアウトサイダーというのは正式な美術教育と受けていない、つまり自閉症などの障害があり特別支援学校に通っている子供達が中心であった。その時も赤のインクを使った作品が多かったように思う。本当に力強い作品ばかりであった。この絵本を紹介するにあたって、この美術展のことを思い出した。